2022年5・6月合併号
芯体操 自然治癒の力を求めて 芯体操代表 津田美智子
アンドルー・ワイル氏は、米国ペンシルバニア州、フィラデルフィア生まれの健康医学研究者であり、医学博士である。また、伝統中国医学など代替医療の伝統も取り入れ、人間に本来備わっている自然治癒力を引き出すヘルスケアシステムである統合医療を、提唱している人物である。
彼の著書に出会ったのは、2002年に芯体操の創立を成し、ダンス一辺倒の生活から徐々に内なるからだの動きに対峙する途中であった。毎年10月に千里よみうり文化センターの舞台に参加するため、多くの作品を生み出し動きまくっていた日々には、まだまだ気付かなかったことがいっぱいであった。その間、多くの方々にマッサージをしてサポートしていることを不思議に思っていた。自分のからだは医者には治せないという覚悟とジレンマに突き動かされるように夢中に生きていた。その頃から、自分のからだは自分で守るべきであるという信念が育まれていたと思う。
ワイル氏には分っていたのです。「医学が病気よりも治癒のほうに注意を向け、人間の自然治癒力を信じる医師たちが、治療よりも予防を重視しているような未来社会をイメージしてほしい。そのような社会になったら、救命救急施設を除いて、病院は治療の場ではなく、どちらかといえば温泉保養地に似たものになるだろう。患者はそこで健康的な生活の原理を学び、それを身につけることができる。からだにいい食事とはなにかを学び、それを身につけることができる。からだに注意を払う方法を学び、そのつくりかたを覚える。からだの要求を満たし、からだに注意を払う方法を学び、治癒をうながすようなこころの使いかたを学ぶ。そして人びとの医療の専門家への依存はだんだんにへっていくだろう。」
「救命救急施設においても、たとえば損傷を受けた器官の再生を刺激するような、治癒系のはたらきを助ける方向にテクノロジーが利用されるようになるだろう。そのような施設でもすべての患者が現代医学と代替医学の最高のアイデアとメソッドを利用できるようになるだろう。そのような社会になったら、医師と患者は同じ目的に向かって努力するパートナーになり、医療過誤をめぐる訴訟などはめったにみられなくなるだろう。保険会社は予防医学教育と自然療法が企業の最大の利益につながることを知り、喜んでそれらに償還するようになるだろう。」
このような変革を阻害するものとは、治癒および代替医学の科学研究は確かに遅れているが、それは研究の優先順位を決定し、研究基金を分配する立場にいる人たちがその分野に関心がないからにすぎないと、ワイル氏は言っている。
ワイル氏のことばは、私がおかれた状況のなかで多くの体験を通して学んだことをこれほど明快に伝えてくれたことは今までなかった。本当に嬉しかった。
だから言える。芯体操の目指している理念が、確かなものとして自己発展による自然・精神の世界が成立し、自分と向き合えると信じられるからではないだろうか。