2023年4月号
『芸術は長く、人生は短し』 芯体操代表 津田美智子
去る3月28日、「世界のサカモト」と評された音楽家の坂本龍一さんが71歳で、逝去されました。2020年に病名が分かり、2021年に直腸がんを公表し闘病を続けておられましたが、その坂本さんが好きだったという一節が、「芸術は長く人生は短し」だったそうです。幼少の頃からピアノと作曲を学び東京芸術大学に入学、大学院を終了後、1978年に「イエロー・マジック・オーケストラ」(YMO)としてアルバムを発表し当時の最新の電子楽器(シンセサイザー)を使った斬新な音楽性で“テクノポップ”という新たなジャンルを築きました。その頃は、私が健康体操を始めた頃でした。まだ坂本さんを知らなかったのですが、シンセサイザーを使った音楽が、どんどん流行り出した頃で色々な曲に出会って多くの学びがありました。シンセサイザーとの出会いについて坂本さんは2014年に放送された番組の中で「尺八」を吹けるようになるには何年もかかるが、シンセサイザーを使えば近いような音が出て、それによって使える音色が飛躍的に増えるとして「ものすごく喜びを感じていました」と話しています。 時を同じくして、坂本さんに続いて、日本のシンセサイザー音楽家として星吉昭さんが、1980年に「姫神センセーション」を結成し、1984年に解散し「姫神」に改名しています。不思議な感覚ですが、私はYMOを知らなかったのに、後年に「姫神」の音楽と出会っていたのです。健康体操でも色々な曲で踊っていましたが、少しずつ自分で振り付けるようになってからは、滋賀県にあったタワーレコードに通いました。このお店は、自由に片っ端から聴きまくれたので良いと思えば毎回、CDを5、6枚は買って帰りました。必ずしも使えるわけではなかったのですが、音に敏感になったのはこの時期のお蔭だと思っています。「姫神」のアルバムから振り付けた作品は、「風の大地」「まほろば」「光の海南」「雪光る」等々・・・滔滔(とうとう)と流れる景色が群舞で表現することによってさまざまな世界観を与えてくれました。 坂本さんは1983年にYMO解散の後、同じ年に公開された「戦場のメリークリスマス」に俳優として出演し、映画のテーマ曲は、長年にわたって聞き続けられる代表曲の一つとなっています。 1987年には、映画「ラストエンペラー」の音楽でアカデミー賞作曲賞を受賞したほか、グラミー賞など数々の賞を受賞して国際的な評価を高められました。平和や「脱原発」、環境保護や復興支援など社会的な分野で積極的に行動し自身の意見を社会に発信してこられたのです。 因みに、1946年生まれの「姫神」星吉昭さんは2004年に58歳の若さで惜しまれつつ亡くなられています。坂本さんの「民主主義の世界」、「非核」のメッセージは今の世の中だからこそ伝え続けて欲しかった。思えば「芯体操」の心とからだのメッセージも、このシンセサイザーの曲とお二人の世界観から培われたものかもしれません。 『芸術は長く、人生は短し』深く心に染み渡る言葉です。 合掌